公証人による外国向け私文書の認証について

通常、日本国内向けの文書であれば、文書の名義人が実印を押し、その実印の印鑑登録証明書を文書に添付することによって、文書の作成名義の真正性(その文書が名義人の意思に基づいて作成されたものであること)を証明するという方法が一般的です。しかし、この実印と印鑑登録証明書による証明は、外国向けの文書に用いることができません。そのような場合に、公証人による認証という方法により、文書への署名(署名押印)や記名押印の真正性を証明することになります。

外国へ文書を提出する際、その文書が「公文書」であれば、その文書が日本国内で「真正」に作成されたものである証明のため、「アポスティーユ」「公印確認+領事認識」の取得が必要になりますが、「私文書」であれば、その前段階として、公証人による私文書の認証を受けなければなりません。今回は、公証役場・公証人による、外国向け私文書の認証について、その概要や手続きのながれを解説していきます。

・公証人による外国向け私文書の認証を受けたあとの、外務省でのアポスティーユや公印確認の交付については別のブログ記事でまとめています。ぜひこちらもチェックしてみてください。
→関連ブログ:外国への文書提出〜アポスティーユと公印確認〜

公証人による認証(私署証書の認証)

公証役場・公証人とは、遺言などの公正証書の作成、私文書や会社等の定款の認証などの「公証業務」を行う公的機関(法務省・法務局所管)です。公証人による私文書の認証は、「私署証書の認証」という公証事務になりますが、それぞれの用語についてもう少し詳しく見ていきましょう。

(1)私署証書ってなに?
「私署証書」とは、文書作成者の署名(署名押印)または記名押印のある私文書のことをいいます。なお、私文書とは、公文書(省庁その他の役所または公務員が職務上作成した文書)以外の、個人や会社が作成した文書等のことです。

「署名」「記名」の違いについて

署名 「署名」とは、本人が自分自身の名前を自筆で書くことを定義します。また「署名」については、法令では「自署」とも言います。
記名 「記名」とは読んで字のごとく、氏名を書き記すことを指します。「記名」については、自筆である必要性がないため、ゴム印や印刷、あるいは本人ではなく、他人が代筆したケースにおいても「記名」と定義されます。つまり「記名」は、自筆でなくても良い点、代筆も認められる部分で「署名」や「自著」、「サイン」とは異なります。

(2)私署証書の認証ってなに?
「私署証書の認証」とは、私文書の成立の真正(作成者の意思に基づいてその文書が作成されたこと)を証明するため、私文書にされた署名(署名押印)または記名押印が本人のものであることを、公証人が証明することです。ただし、私文書であっても、作成者の署名(署名押印)または記名押印のないものは、認証の対象とはなりません。私署証書の認証を受けると、公証役場に持参した私署証書と、公証人が作成した認証文が綴じられて返却されます。

外国向け私文書の認証

外国向け私文書(※)の認証(外国文認証)も基本的には日本国内向け私文書の認証(私署認証の認証)と同じ手続きで行われます。というよりも、印鑑登録制度が確立されている日本国内においては、私文書を会社等や官公署に提出する際、公証人の認証を求められることはほとんどありません。ですので、実際に公証役場において公証人が行う私署証書の認証は、ほとんどが外国向け私文書の認証(外国文認証)となります。外国向け私文書の認証は以下5つの種類に分類されます。

(※)ここでの「外国向け私文書」とは、外国語で作成された私署証書、および外国語または日本語で作成され、外国において使用される私文書を指します。

【認証方法】 【内容】
① 面前認証
(目撃認証)
➡署名者本人が、公証人の面前で文書に署名する場合
② 面前自認
(自認認証)
➡署名者本人が、公証人の面前で文書に署名したことを、自ら承認する場合
③ 代理自認 ➡代理人が、公証人の面前で署名者本人が文書の署名が本人のものであることを自認した旨陳述した場合
④ 謄本認証 ➡嘱託人(認証を申請する方)の提出した文書の謄本がその原本と対照し符合する場合
⑤ 宣誓認証 ➡当事者が、公証人の面前で文書の記載が真実であることを宣誓の上、文書に署名し又は署名を自認する場合。同じ文書を2通作成します。

外国向け私文書の認証に必要な書類

外国向け私文書の認証の場合、認証の種類が上記①~⑤のどれにあたるのか、文書の提出先国がどこなのか、認証を必要とする文書の署名者が誰なのか(個人としての署名/会社代表者の署名/会社の代表者でない者の署名)等により必要書類が異なります。以下それぞれの場合の必要書類について見ていきましょう。

個人が認証を受ける場合

認証を受ける文書の署名者が「個人」で、肩書き等を付さずに署名する場合、署名者本人が公証役場に行く場合と、代理人が公証役場に行く場合とで必要書類が異なります。

(1)署名者本人が公証役場へ行く場合(面前認証・面前自認・宣誓認証の場合

【必要な書類】
① 認証を受ける書面1通
② 署名者本人であることを証明するものとして、つぎの(a)から(e)までのうちのいずれか1つ
(a)署名者の印鑑登録証明書(発行後3か月以内のもの)及び実印
(b)運転免許証
(c)パスポート
(d)住民基本台帳カード(写真付き)
(e)その他顔写真入りの公的機関発行の証明書

(2)代理人が公証役場へ行く場合(代理自認の場合

【必要な書類】
① 認証を受ける書面1通
※なお、パスポートの代理認証(宣言書・証明書等)の場合には、パスポート自体も必要になります。
② 署名者本人の印鑑登録証明書(発行後3か月以内のもの)
③ 署名者本人の実印が押印された本人から代理人への委任状
④ 代理人の身分証明書として、つぎの(a)から(e)までのうちのいずれか1つ
(a)代理人の印鑑登録証明書(発行後3か月以内のもの)及び実印
(b)運転免許証
(c)パスポート
(d)住民基本台帳カード(写真付き)
(e)その他顔写真入りの公的機関発行の証明書

法人の代表者が認証を受ける場合

認証を受ける文書の署名者が「法人の代表者」で、肩書き等を付して署名する場合、署名者本人が公証役場に行く場合と、代理人が公証役場に行く場合とで必要書類が異なります。

(1)署名者本人が公証役場へ行く場合(面前認証・面前自認・宣誓認証の場合

【必要な書類】
① 認証を受ける書面1通
② 署名者の肩書きを証明する資料として、つぎの(a)または(b)のいずれか1つ
(a)法人登記簿謄本(発行後3か月以内のもの)
(b)登記事項証明書(発行後3か月以内のもの)
③ 署名者本人であることを証明するものとして、つぎの(a)から(f)までのうちのいずれか1つ
(a)法人代表者の印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)及びその代表者印
(b)署名者個人の印鑑登録証明書(発行後3か月以内のもの)及び実印
(c)運転免許証
(d)パスポート
(e)住民基本台帳カード(写真付き)
(f)その他顔写真入りの公的機関発行の証明書

(2)代理人が公証役場へ行く場合(代理自認の場合

【必要な書類】
① 認証を受ける書面1通
② 署名者の肩書きを証明する資料として、つぎの(a)または(b)のいずれか1つ
(a)法人登記簿謄本(発行後3か月以内のもの)
(b)登記事項証明書(発行後3か月以内のもの)
③ 法人代表者の印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)
④ 署名者ある法人代表者からの委任状(法人代表者の上記③と同一の代表者印の押印された委任状)
⑤ 代理人の身分確認として、つぎの(a)から(e)までのうちのいずれか1つ
(a)代理人の印鑑登録証明書(発行後3か月以内のもの)及び実印
(b)運転免許証
(c)パスポート
(d)住民基本台帳カード(写真付き)
(e)その他顔写真入りの公的機関発行の証明書

法人の役員等が認証を受ける場合

認証を受ける文書の署名者が「法人の代表者以外の者」で、役職者等の肩書き等を付して署名する場合、署名者本人が公証役場に行く場合と、代理人が公証役場に行く場合とで必要書類が異なります。

(1)署名者本人が公証役場へ行く場合(面前認証・面前自認・宣誓認証の場合

【必要な書類】
① 認証を受ける書面1通
② 署名者の肩書きを証明する資料として、つぎの(a)~(c)のすべて
(a)つぎの(ⅰ)または(ⅱ)のいずれか1つ
 (ⅰ)法人登記簿謄本(発行後3か月以内のもの)
 (ⅱ)登記事項証明書(発行後3か月以内のもの)
(b)法人代表者の印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)
(c)法人の代表者が作成し、法人代表者の上記(b)と同一の代表者印が押印された役職証明書
③ 署名者本人であることを証明するものとして、つぎの(a)から(e)までのうちのいずれか1つ
(a)署名者の印鑑登録証明書(発行後3か月以内のもの)及び実印
(b)運転免許証
(c)パスポート
(d)住民基本台帳カード(写真付き)
(e)その他顔写真入りの公的機関発行の証明書

(2)代理人が公証役場へ行く場合(代理自認の場合

【必要な書類】
① 認証を受ける書面1通
② 署名者の肩書きを証明する資料として、つぎの(a)~(c)のすべて
(a)つぎの(ⅰ)または(ⅱ)のいずれか1つ
 (ⅰ)法人登記簿謄本(発行後3か月以内のもの)
 (ⅱ)登記事項証明書(発行後3か月以内のもの)
(b)法人代表者の印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)
(c)法人の代表者が作成し、法人代表者の上記(b)と同一の印鑑が押印された役職証明書および署名者本人の印鑑登録証明書(発行後3か月以内のもの)
③ 署名者である役職者から代理人への委任状(署名者である役職者本人の実印が押印された委任状)
④ 代理人の身分確認として、つぎの(a)から(e)までのうちのいずれか1つ
(a)代理人の印鑑登録証明書(発行後3か月以内のもの)及び実印
(b)運転免許証
(c)パスポート     
(d)住民基本台帳カード(写真付き)     
(e)その他顔写真入りの公的機関発行の証明書    

外国向け私文書の認証を受けた後のながれ

公証役場・公証人により、外国向け私文書の認証を受けた後のながれ(公証人押印証明の取得、アポスティーユや公印確認の取得、領事認証の申請等)については、別のブログ記事で詳しく解説しております。ぜひそちらのブログ記事もチェックしてみてください。
➡関連ブログ:外国向けの文書提出~アポスティーユと公印確認~

当事務所でのサポートについて

留学、海外企業への就職、国際結婚、また海外での日本法人設立、海外企業との契約の締結などの際、外国の役所や大学、会社等の機関に対し、日本国内で発行された文書を提出する際には、その文書の翻訳だけではなく、その文書が日本国内で真正に発行されたものであることを証明する「認証手続き」が求められます。この認証の手続きは、「アポスティーユ」「公印確認」+「領事認証」などを組み合わせて行いますが、提出を求められる文書が「私文書」の場合、今回解説した「公証人による認証手続きが」がまず必要になります

外国向け文書の認証手続きについては、お住まいの地域によって、ご本人が公証役場や大使館に出向いて手続きを行なうことが難しい場合も多いかと思います。当事務所では、公証人による私署証書の認証、アポスティーユ、公印確認、外国領事の認証等の手続きを代行します。外国へ提出する文書の認証手続きについて、無料でご相談を承っておりますので、ご不明な点があれば、ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。

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